【洋楽】ヒップホップ史に残る名盤!押さえておきたい基本の1枚
ヒップホップの歴史は長く、その影響力は他のジャンルはもちろんカルチャーやファッションにいたるまで及ぶものです。
ここ日本でも、素晴らしいアーティストが商業的に成功を収めている実績も多く見られますが、まだまだある種のイメージで敬遠している方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、今や海外においてはポピュラー音楽の中心といっても過言ではないヒップホップの、その時代時代におけるエポックメイキング的な作品を中心とした名盤を集めてみました。
進化し続けるヒップホップという音楽を、この機会にぜひ味わってみてください!
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【洋楽】ヒップホップ史に残る名盤!押さえておきたい基本の1枚
YonkersTyler, The Creator
2010年代のオルタナティブ・ヒップホップ・シーンの幕開けを告げる、代表的な1枚と言っても過言ではないでしょう。
2010年代初頭に頭角を現した新世代グループ、オッド・フューチャーの創設メンバーであり、2020年代を過ぎた今もリリースする作品は常に高い評価を受け、商業的にも成功を収めるなどトップ・アーティストとして活躍するタイラー・ザ・クリエイターさんによる本格的なソロ・デビュー作『Goblin』です。
当時はインターネット上の耳の早い音楽ファンを中心として、オッド・フューチャーという若く才能のあるグループの存在が注目を集めつつあった時期で、タイラーさんのアルバムが名門XL Recordingsからリリースされることが判明した時は、ヒップホップ好きのみならずインディー・ロックを愛聴しているリスナーの間でも大いに話題となりました。
リリース時はまだ20歳を迎えたばかりのタイラーさんの鬼才ぶりが存分に発揮された本作は、先行シングルとして発表された『Yonkers』の過激な内容のMVも強烈なインパクトを与えましたね。
もちろん、単なる話題性だけでなく重々しくも浮遊感のあるトラックと低音のラップが織り成す奇怪な音世界は、彼の才能を如実に示すものでしょう。
リリースから10年が過ぎた20年代、あらためて本作の魅力を味わってほしいですね。
(KOH-1)
Straight Outta ComptonN.W.A
アメリカはカリフォルニア州、コンプトンという全米でもとくに治安の悪い地域で結成された伝説的なヒップホップ・グループが、N.W.Aです。
「主張する黒人たち」という意味を持つグループ名だけでも分かるように、ストリートの現実を過激なリリックに託した音楽性はとてつもないインパクトを放ち、抑圧された若者たちに多大なる影響を与えました。
アイス・キューブさんやドクター・ドレ―さん、若くして亡くなったイージー・Eさんなどまさに伝説級のメンバーが多く在籍しており、彼らの結成から解散、再結成までの軌跡を取り上げたドキュメンタリー映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』も記憶に新しいですよね。
1988年にリリースされた同名のデビュー・アルバムはまさにギャングスタ・ラップの古典であり、ドクター・ドレ―さんとDJ・イェラさんによる見事なトラック・メイキング、3人のMCによる切れ味鋭いラップと自分たちのタフでリアルな実情を描いた歌詞は、いつの時代であってもその説得力を失うことはないでしょう。
当時は過激すぎて放送コードに引っかかる、MVが放送中止となるなどの話題も提供しましたが、2017年にはアメリカ議会図書館の「国家保存重要録音登録制度」に登録され、文化芸術としての偉大な価値を多くの人が認める作品となったのです。
(KOH-1)
Don’t Sweat The TechniqueEric B. & Rakim
80年代半ばから90年代初頭にかけての、いわゆる「ゴールデンエイジ・ヒップホップ」と呼ばれる世代はそれこそ伝説的なアーティストやグループが多く存在しています。
本稿で取り上げているエリック・B&ラキムは、その中でも知名度や影響力どちらにおいてもトップ・クラスのデュオであり、とくにMCのラキムさんのラップはヒップホップの歴史において最も影響力のあるものの一つとして評価されているほどなのですね。
ギャングスタ・ラップや政治的なアジテーションを基本とするラップとはまた違う、思慮深い洞察力や哲学的な感性を軸とした詩を、どこまでもクールに冷静に語りかけるように巧みにラップする様は唯一無二のかっこ良さ。
そんな彼らにとって最後のアルバムとなった1992年の『Don’t Sweat The Technique』は、ウッド・ベースによる黒いジャズ・グルーブがあまりにも印象的な表題曲をはじめとして、センスの良いサンプリング・ソースを用いてメロディアスかつファンキーに仕上げた古き良きオールドスクール・ヒップホップの良心の如き作品です。
残念ながらクレジットの表記などでトラブルとなり、グループ解散の引き金となったと言われていますが、本作を含めて4枚しかない彼らのアルバムは、すべて聴いてみることをオススメします!
(KOH-1)
In Da Club50 Cent
名曲『In Da Club』のMVに映し出された、筋骨たくましいタフなボディを誇示しながらトレーニングする50セントさんの姿は、衝撃の一言でした。
デビューに至るまでのハードすぎる人生経験も踏まえて、まさに2000年代初頭という時代に新たな「本物のギャングスタ」が登場した瞬間でもありました。
エミネムさんとドクター・ドレ―さんという最強の布陣がバックアップを務め、2003年にエミネムさん主宰のレーベル「シェイディ・レコーズ」よりリリースされたデビュー・アルバム『Get Rich or Die Tryin’』は余裕の全米チャート1位、アメリカだけでも800万枚以上を売り上げて世界的なヒットとなった2000年代のヒップホップ・シーンを代表する傑作です。
直球すぎるタイトルに50セントさんの人生哲学のようなものを感じさせ、後に制作された自身が主演した自伝的な映画のタイトルにもなっておりますが、肝心の内容も期待以上のハードコアな内容です。
ギャングスタ・ラップの王道といえる過激なリリックを淡々とラップする50セントさんの声は、若くして人生を悟ったかのような落ち着きを感じさせ、無駄な装飾などを一切排したシリアスなトラックとの相乗効果で限りなくハードボイルド、しびれるほどかっこいいですよ!
(KOH-1)
Dirt Off Your ShoulderJay Z
ヒップホップ史上最も人気のあるラッパーの1人であり、実業家としての活動も含めて最も裕福なミュージシャンとしても知られるジェイ・Zさん。
奥さまがあのビヨンセさんという、最強夫婦ということでも有名ですよね。
あまりヒップホップに興味のない方で、ゴシップな話題性でしかジェイ・Zさんのことを知らないというのは損をしているかもしれません。
ラッパーとして、ミュージシャンとして破格の才能を持った存在であり、リンキン・パークとコラボレーションを果たすなど柔軟な姿勢の持ち主であり、とてつもない努力を重ねたからこそ、ハードな人生を乗りこえて誰もがうらやむ成功を手にしたのです。
そんなジェイ・Zさんが引退作として2003年にリリースした『The Black Album』を、今回は取り上げます。
豪華なプロデューサー陣やゲスト・ミュージシャンがそれぞれの手腕を発揮しながらも、あくまで主役はジェイ・Zさんであり、よりすぐりのキラーチューンがずらりと並ぶ見事な1枚です。
引退騒動は後に撤回しますが、当時はこれが最後と決めて本作を作り上げたということを念頭に置いてから、このアルバムと向き合ってみるとまた違った聴こえ方がしてくるかもしれませんよ。
(KOH-1)
RosesOutKast
アンドレ・3000さんとビッグ・ボーイさんから成るアウトキャストは、今やヒップホップのみならずポップスやロックといったジャンルでも当たり前のように使われるトラップ・サウンドを生み出したとされる、いわゆる「サザン・ヒップホップ」の先駆的な存在です。
アメリカ南部を中心とするヒップホップであり、西海岸と東海岸が全盛期の時代に最初に南部出身のラップ・グループとして全米進出に成功したのがアウトキャストなのですね。
彼らのサウンドはヒップホップの文脈にとらわれず、臆することなく革新的な音楽を生み出すスタイルが高く評価され、商業的にも大きな成功を収めています。
そんな異色の存在とも言えるアウトキャストの2人が、それぞれの実質的なソロ・アルバムを2枚組としてリリースした通算5枚目のアルバム『Speakerboxxx/The Love Below』は、まさに既存のルールにとらわれない彼ららしい作品であり、世界中で大ヒットを記録した作品です。
それぞれの個性が存分に発揮され、タイプもコンセプトも違う2枚のアルバムを同一のグループ名義で1つの作品としてリリースするということ自体、普通のミュージシャンならばやろうとは思わないですよね。
当時は街中で流れていた『Hey Ya!』など、多くのヒット曲も生まれた本作は、ヒップホップ・ファンだけでなくオルタナティブ・ロックなどの音楽ファンをも熱狂させたのです。
(KOH-1)